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なぜ「ドラクエは海外で売れないと作れなくなる?」かわかるデータ

去る9月23日、東京ゲームショウ2018の会場にてスイッチ版「ドラゴンクエスト11S」が発表されました。

 

ぼくも「ドラゴンクエストニュース(DQN)」と銘打って動画を展開している以上、当然のことながら、この話題をいち早く動画として完成させ、投稿したかった。

 

けれども、ぼくが動画をアップすることができたのは、それから一週間以上たった10月2日のこと。この間、なにがあったのか?

 

こんな騒動が飛び込んできました。

 

jp.ign.com

 

世界最大のゲームメディア「IGN」の日本版がドラクエ11開発者への単独インタビューをおこなった際に飛び出したスクエニ岡本Pの発言「海外で――ある程度でもいいですけど――売れてくれないと、もうドラゴンクエストは作れなくなっちゃう」

 

どういう背景があるかというと、ゲームに求められる規模、映像クオリティ、仮想世界の作り込みのハードルは年々上がる一方。当然、開発費もうなぎのぼりで、これまでのように国内の売り上げだけでは回収できないということがあるようです。

 

ドラクエファンとしてはかなり衝撃的な発言だったことでしょう。しかし、後日、言った本人の岡本ドラクエ11プロデューサーはこの発言が誤解を招くものだったとして、以下のように訂正しています。

 

「海外で売れないと次作れないかもというのは海外版の話のつもりでした…! 国内が厳しいというわけではない」

 

ドラクエファンとしてはホッとしたところでしょう。「そうだよな、ドラクエ11だって300万本も売れたのに、次が作れないなんてことがあるわけがない」

 

ぼくもそう思います。ドラクエ人気はかつてほどではないでしょうが、30代、40代の大人を中心に根強いものがあります。これほどの人気タイトルが作れなくなるわけがない。

 

ただし、今後、ドラクエは次の2つの道のうちから、一つを選ぶことを迫られるでしょう。

 

A:日本の誇る大作ゲームとして、史上最高、最大のRPGの姿を追い求め続ける

B:かつてのファンに向けて、規模を縮小しながら「懐かしのRPG」として生き残る

 

言い換えれば、海外で売れないと…、Bの道を選ぶしかない。ドラクエに自身の古き良き子供時代の追体験を求めている筋金入りのドラクエ世代の大人は「むしろそのほうがいい」という人も多いと思います。

 

ただ、現時点でスクエニ社がAの道を捨てることはないと思われます。現状、同社のドラクエ部門のほとんどの利益を稼ぎ出していると思われるソシャゲ「星のドラゴンクエスト」の人気も、本編のブランド力があってのことです。本編が特定世代の懐古需要に寄り添いながら細々と生き残っても、会社としてはドラクエIPが生み出す売上を大幅に減らすことになるのだから、そんなことを今から選択する経営判断はありえないでしょう。

 

つまり、前述の岡本Pの発言は、「海外で売れないとAの道は捨てるしかなくなる」という意味でとらえればいいと、ぼくは考えています。

 

気になる方は、今回の発言の大元のインタビュー動画をぜひ、みていただきたいと思います。(話題の発言は3:48~)

 

youtu.be

 

ぼくは、この話題を自分の動画に取り込むかどうか本当に悩みました。もともとの「ドラクエ11S」で発表された内容が「しゃべるのS」ぐらいしかなかったこともあって、なにか他にネタを盛り込まなければならない。

 

ただ、ぼくの動画はドラクエのファンコミュニティです。ドラクエファンが見て楽しい気分になる動画を目指しています。「お父さんや小3の妹と一緒に家族でみています!」という人もいます。その中で、こういうファンが不安になるような話題、それも言った本人が訂正している話題を取り上げるのはさすがに憚(はばか)られました。

 

結果的に「ドラクエ11Sは最後のS」というテーマで動画が完成したのですが、これでも、相当にぶっこんだ内容にしたつもりです。「これまでのドラクエはこれで終わり。ドラクエ12からはゲームシステムを刷新した、新しいドラクエ本編がはじまるよ」と言っているのだから。

 

youtu.be

 

反発、拒否反応が多く来るのは覚悟の上でしたが、ふたを開けてみると、想定よりもそういった反応は少なかったです。もう詳しくは言えませんが、内部的にネガティブなデータは「まったく」でてこなかったです。

 

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また、表から見えるデータとしても、荒れる内容にもかかわらず動画の低評価が他の動画に比べて極端に多いわけでもなく、動画公開から日が経つにつれドラクエ世代の大人と思われる方から「ドラクエ変わらないでくれ」といった趣旨のコメントも多くいただくようになりましたが、この動画1本のコメント数が900を超える中、想定以下の数で落ち着いています。

 

 

そして、ぼくはコメント返信において「動画をみてくださったお客さんの声を尊重する」という考えのもと、基本的に頂いたコメントに対する反論などは極力控えているのですが、今回に限っては、ぼくの意見を曲げずに真正面から書かせていただきました。

 

それだけ、ぼくの中で「ドラクエは岐路(きろ)に立たされている」という危機感が強いからです。非常に大事なことなので、ドラクエファンの方にもできれば共有してほしい問題として、やっぱり考えているのが本音だからです。

 

ドラクエのいま直面している岐路とは、さきほど紹介したAの道とBの道です。

 

動画では直接的にはいいませんでしたが、なんとなく伝わるようには紹介したつもりです。

 

ドラクエおなじみの「たたかう」→「こうげき」→「スライムベスに10のダメージ」というシーンの映像の後に、ゼルダ最新作の映像を流したのはそういうことです。

 

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ドラクエではただの背景でしかなかった崖の向こうの遠景に飛び立っていける様子。さらにそこからシームレスに崖の下の岩山に飛び移れる様子。夕日の照り映る川面に流されるまま滝から落ちたのちに、滝登りで爽快に自然に立ち向かう様子。

 

そしてこれらの一連の流れがまったく破綻なくゲームシステムとして成立していて、しかもプレイヤーに複雑な操作を強いることもない。だれでも簡単にこういった次元で仮想世界の中に存在することができる。

 

これをみて、ドラクエを買い支えてくださっている「ゲームはドラクエしかしない人」にも感じ取ってほしかった。

 

これをもって「ならゼルダやれば?」で済ませるのは、つまるところ「B」の道を選ぶということです。それはただの意固地だと思います。

 

スクエニ社はドラクエをAの道にすすめるでしょうし、ぼくも一人のドラクエファンとして、ドラクエにはAの道を立派に歩んでほしいと思っています。

 

それに大多数のドラクエファンも「A」の道に進んでほしいと思っているのではないでしょうか?少なくとも、10万再生以上をいただいた動画の反応を見る限り、ぼくはそうであると思っています。

 

最後に、ドラクエを取り巻く環境が変わったことを示すデータをとりあげましょう。

 

1988年。ドラクエ3が記録的な大ヒットを飛ばし、社会現象にもなった年の世界のGDP国内総生産=その国の市場規模の目安にもなる)の分布はこのようになっています。

 

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この年、G7(先進主要7か国)だけで世界のGDPのおよそ7割を占めていました。(右側の灰色の丸はその他のすべての国です)

 

この先進主要7か国とは、つまるところ19世紀から続く列強の面々です。

 

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上の写真は有名なもので1900年に清(中国)で起きた義和団の乱を鎮圧した列強の兵士の合同記念写真です。

 

左からイギリス、アメリカ、イギリス領オーストラリア、イギリス領インド帝国、ドイツ、フランス、オーストリア・ハンガリー帝国、イタリア、日本。

 

せいぜい、イギリス(大英帝国)とオーストリア(ウィーンで有名)が没落して、日本とアメリカが躍進したぐらいで、これらの国々が世界の富と市場の大半を牛耳っている構図は、わりと最近まで変わっていなかったのです。

 

そして、次にドラクエ6が発売された1995年。

 

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なんと日本は首位のアメリカ(7.66兆ドル)に迫る(5.33兆ドル)をも記録しています。これは大変にすごいことで、ドイツ、フランス、イギリスと比べても日本は2倍以上の規模です。列強7か国とその他の世界の比較で見ても、相変わらず列強は金持ちクラブとして世界のGDPの66.1%をも占めていました。

 

実のところ、この時代、日本のGDPはほかのアジア諸国、つまり中国、香港、台湾、韓国、インドネシアシンガポール、インド、サウジアラビアなどなどをすべて足したものよりも、まだ大きかったわけです。今となってはまったく信じられないことですが。

 

そして、ドラクエが生まれ、人気を博していき、もはや昔話の中でしか語られない日本のゲームメーカーが世界を席巻していた時代というのは、こういう世界の中でも巨大な日本市場という基盤があってはじめて成立していたものなのです。

 

ひるがえって、現代はどうなっているでしょうか。

 

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19世紀以来の伝統的な旧帝国主義7か国の占める比率は45.9%にまで下がりました。それも内訳をみると、アメリカ(17.35兆ドル)が大部分を占め、日本(4.6兆ドル)はその4分の1の規模になってしまいました。

 

そして、その他の国(灰色)で示された最大の丸は言うまでもなく中国です。いや、中国に限らず世界の国々は21世紀に入り大きく成長しました。

 

これはゲーム業界という以前に、数百年に一度の歴史上とてつもなく大きな変化が起こっているわけです。

 

ドラクエは日本のGDPに歩調を合わせるように、おおむね300万本~400万本の売り上げという横ばいで推移していますが、いまとなっては「300万本も」じゃなくて「300万本しか」です。

 

いま、世界のゲームシーンを席巻しているのは、この21世紀になって巨大化した市場で売れているゲームです。1000万本以上も売れるゲームが続々と登場している背景は、この成長した世界の市場です。

 

そこで得られた巨大な利益をテコに、さらなる技術の研究開発を進め、ゲーム性と仮想世界の作り込みのクオリティのハードルを上げ続けています。

 

日本のゲームメーカーでみても、ゼルダ、モンハン、マリオ、FF、ポケモン、ダークソウル、スプラトゥーンなどなど、世界市場で1作あたり500万本~1000万本売れているシリーズはけっこう出てきました。

 

ドラクエ11の300万本~400万本クラスというのは、実のところスクエニ社内でも同じ開発部署の「ニーアオートマタ」と同じ規模でしかありません。ドラクエ11のほうがだいぶ開発費がかかっているであろうことを考えると、その利益への貢献度は推して知るべしです。

 

そして特に気を留めなければいけないのは、この傾向は一時的なものではなく、これからさらに加速する現象であるということです。

 

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主要国のGDPをグラフ化してみる(最新) - ガベージニュース

 

こうしてみると、日本は1996年と2013年を境に大きくGDPを減少させていることがわかります。上のグラフは2022年までの予測も含まれていますが、拡大する一方の中国、アメリカ、インドなどの市場の成長に比べて、まことに残念ながら引き続き日本市場の相対的地位が下がるのは避けられそうにありません。

 

つまり、このまま日本市場に特化したゲーム作りをしていれば、ますます海外のAAA(トリプルエー)と呼ばれる超大作ゲームプロジェクトとの資金力の差は、取り返しのつかないところまで広がることでしょう。正直、もう待ったなし、限界だと思います。

 

だけれどもぼくは悲観していません。動画の中で解説したように、ドラクエ11こそ小学生ユーザーが多い3DS版に合わせる形で「これまでのドラクエ」を踏襲したものでしたが、スイッチが小学生に普及した今、もはや3DSで再現できるゲームにこだわる必要はありません。

 

次は、おそらくドラクエ11開発前から構想を練っていたであろう次世代ドラクエを世界に向けて発信してくれることを、ぼくは期待しています。